疲労民雑記

個人的な出来事など。人の役に立つような記事は無いと思います。

あるアパートに住んでいた爺さんのこと

空室

 

近所のアパートに、夏場は玄関のドアを全開にして夜も過ごしている爺さんがいた。窓もカーテンを閉めず、部屋の中が半分ぐらいは見えるような状態だった。

道路に面したところにドアがあるので、前を通ると「あ、また開いてる」なんて思いながらチラ見をしてしまう。ドアの先にはトイレがあるのだが、たまにトイレのドアも開けっぱだったりすることもあった。

どうもその爺さん、エアコンを設置していなくて、扇風機だけのようだったから風通しをよくするためにドアを全開にしていたのだと思う。

蚊とか虫が入ってこないのだろうか、そもそも物騒だろとか思ったが、きっとそんなことはどうでもいいのだろう。よほどの荒天じゃなければドアも窓(網戸はある)も全開、そんな夏を過ごす爺さんだった。

俺は見かけたことがないのだが、時々娘さんらしき女性が来ていたりしていたようで、身内の人がいるということは分かっていた。

特に言葉を交わしたこともないし、爺さんの姿も数えるほどしか見かけていないが、夏場の開けっ放しのドアは日常の風景のひとつぐらいの感覚で2年ぐらいは見てきたと思う。

 

先日、その爺さんの部屋にクリーニング業者が入っていて、部屋が空っぽになっているのを見た。そういえば、今年の夏はドアが全開になっているのを見かけた記憶がない。いや、そもそも俺がテレワークで外に出ないから、夏場の夜にアパートの前を通っていないからかもしれないが。

それでも、一瞬変なことを考えてしまった。ついにお亡くなりになってしまったのだろうかと・・・。

そんなんではなく、もしかすると別のところに引っ越したのかもしれないし、ケアホームに入ったのかもしれないし、ご家族と一緒に暮らすことになったのかもしれない。そう思いたいし、どうか元気であってほしい。

いまもドアのところには名前が貼ってあって、これも近々無くなってしまうのだろう。全然知らない他人だけど、よく見ていた光景が変わってしまうのはなんとも寂しいものだと思った。